kamitool > 読みもの > OBSの音声ミキサーとフィルタの基本、ゲイン・ノイズゲート・コンプレッサーの役割

OBSの音声ミキサーとフィルタの基本、ゲイン・ノイズゲート・コンプレッサーの役割

kamitool 運営者

配信では、映像よりも先に、音の問題で視聴者が離れることがあります。声が小さい、ゲーム音が大きすぎる、息の音や机をたたく音が入る、といった悩みの多くは、OBSの音声ミキサーとフィルタで整えられます。この記事では、ミキサーの見方、主なフィルタの役割、かける順番、確認のしかたをまとめます。数値は、すべて「出発点の目安」です。マイクや部屋、声の大きさで最適な値は変わるので、実際に聞きながら調整してください。

音声ミキサーの見方

OBSの画面の下にある「音声ミキサー」には、音を出しているソース(マイク、デスクトップ音声など)が、1本ずつ並びます。各ソースには、音量を示すメーターと、音量を調整するスライダー、ミュートのボタン、歯車のボタンがあります。

部品役割
メーターいま出ている音の大きさを、緑、黄、赤の帯で示す。左ほど小さく、右ほど大きい
スライダーそのソースの音量を上げ下げする。dB(デシベル)の単位で調整される
ミュートのスピーカーそのソースの音を止める
歯車フィルタ、音声の詳細プロパティ、名前の変更などのメニューを開く

メーターの数字は、0 dBが上限で、それより小さい値は、マイナスの数で表されます。0 dBを超える音は、音が割れる(クリッピング)原因になります。そのため、メーターの色で言うと、普通に話している声が、緑から黄色の範囲で動き、大きな声や笑い声でも、赤に触れない程度が、一般的な目安です。具体的な数字として、話し声のピークが、おおむね−12 dBから−6 dBあたりに来るように整える、という説明がよく見られます。これも目安で、配信先や、音の好みによって変わります。

ソースは、大きく分けて、マイクなどの「入力音声」と、パソコンの再生音を取り込む「デスクトップ音声」があります。この2つの比率が、聞きやすさを大きく左右します。多くの配信では、声を主役にして、ゲーム音は、その下で鳴らす形にします。

ゲイン(音量の底上げ)

ゲインは、音量を増減する、いちばん基本の調整です。ミキサーのスライダーと似ていますが、フィルタとして加えると、他のフィルタの前で、音の大きさをそろえる役目を果たします。

ゲインを加える手順は、次のとおりです。

  1. 音声ミキサーで、対象のソースの歯車を押す
  2. 「フィルタ」を選ぶ
  3. 左下の+を押し、「ゲイン」を選ぶ
  4. 名前を付けて、OKを押す
  5. 数値(dB)を動かして、メーターの動きを見ながら調整する

大切なのは、原音の入り口で、できるだけ適切な大きさにしておくことです。小さな音をゲインで大きく持ち上げると、背景の雑音も一緒に大きくなります。マイク本体の位置を口に近づける、パソコン側の入力音量を調整する、といった手段が先で、ゲインは、その最後の微調整として使うのが基本です。

ノイズ抑制とノイズゲート

この2つは名前が似ていますが、働きが違います。

フィルタ働き向いている雑音
ノイズ抑制音の中から、声以外の連続した雑音を、減らすエアコン、PCのファン、ホワイトノイズのような、常に鳴っている音
ノイズゲート決めた大きさ以下の音を、通さない(門を閉じる)話していない間の小さな音。机の振動、遠くの生活音など

ノイズ抑制には、方式がいくつか用意されています。OBSの標準では、「Speex」と「RNNoise」が選べます。一般に、RNNoiseは、より自然に雑音を減らせる一方、パソコンの負荷が少し増えます。環境によっては、NVIDIAのグラフィックボード向けの方式が選べる版もあります。どの方式が合うかは、声と環境で違うため、聞き比べて決めてください。強くかけすぎると、声が不自然に変わる場合があります。

ノイズゲートは、「開く」と「閉じる」の2つのしきい値で動きます。しきい値は、dBで指定します。

項目意味初めの値の目安
開くしきい値これより大きい音で、ゲートが開く(音が通る)−26 dB付近
閉じるしきい値これより小さい音になると、ゲートが閉じる−32 dB付近
アタック時間開くまでにかかる時間(ミリ秒)25 ms付近
ホールド時間開いたあと、閉じずに保つ時間200 ms付近
リリース時間閉じるまでにかかる時間150 ms付近

この表の値は、OBSの初期値として知られる付近の例で、版によって異なる場合があります。そのまま使えるとは限りません。調整の流れは、話さずに静かにしている状態のメーターを見て、雑音の大きさを確かめ、それを少し上回る位置に「閉じる」を置き、普通に話したときの声のメーターより、十分下に「開く」を置きます。語尾が切れて聞こえるなら、閉じるしきい値を下げるか、ホールドを長くします。

コンプレッサーとリミッター

コンプレッサーは、大きすぎる音を、自動で少し下げて、音量の差を縮めるフィルタです。小さい声と、大きな声や笑い声の差が大きいと、聞く側が音量を何度も調整することになります。コンプレッサーは、その差をならして、聞きやすくします。

項目意味初めの値の目安
比率しきい値を超えた分を、どれだけ圧縮するか(4:1なら、4 dB超えた分を1 dBに)2:1から4:1あたり
しきい値これを超えた音から圧縮が始まる−18 dB付近
アタック時間効き始めるまでの時間数ms〜10 ms付近
リリース時間効きが戻るまでの時間50〜100 ms付近
出力ゲイン圧縮したあとの全体の音量を補う0 dBから少し持ち上げる

これらも目安です。OBSの初期値は、比率が高めに設定されている版があり、そのままだと強く効きすぎることがあります。まず比率を下げ、声の自然さを確かめながら、しきい値を探します。

リミッターは、決めた音量を超えないように、音を止める最後の安全装置です。しきい値を超える音を、強制的に押さえます。突然の大声や、ゲーム音の爆発的な音が、0 dBを超えて割れるのを防ぎます。しきい値は、−6 dBからさらに下くらいに置く例が多く、初期値も−6 dB付近です。リミッターは、通常の調整が済んだあとの、保険として入れます。

フィルタをかける順番

フィルタは、上から順に処理されます。順番が違うと、結果が変わります。よく見かける順番の例を示します。

  1. ゲイン(入り口の音量をそろえる)
  2. ノイズ抑制(連続した雑音を減らす)
  3. ノイズゲート(話していない間を静かにする)
  4. コンプレッサー(音量の差をならす)
  5. リミッター(割れを防ぐ最後の保険)

この理由は、雑音を処理してから音量をならさないと、コンプレッサーが雑音まで持ち上げてしまうためです。また、リミッターは、他の調整で音量が変わったあとの最終段にあるべきなので、最後に置きます。ただし、この順番は一例で、声や環境に合わせて入れ替えることもあります。聞き比べて、納得できる順番を選んでください。

フィルタの一覧では、ドラッグで順番を入れ替えられます。個別にオン・オフもできるため、「あり」と「なし」を切り替えながら聞くと、効果が分かりやすくなります。

音声の詳細プロパティ、モニタリング、同期

ミキサーの歯車から「音声の詳細プロパティ」を開くと、ソースごとの、細かい設定ができます。主な項目は、次のとおりです。

項目役割
音声モニタリングOBSが受けた音を、自分のヘッドホンなどで聞く。「モニターオフ」「モニターのみ」「モニターと出力」から選ぶ
同期オフセット映像と音のずれを、ミリ秒単位で直す
トラック配信や録画に、どの音声トラックとして入れるかを選ぶ(トラック1〜6)
モノラル化左右の音を1つにまとめる

音声モニタリングで、「モニターと出力」を選ぶと、自分で聞きながら、配信にも音を流せます。「モニターのみ」は、配信には流さず、自分だけが聞く用途です。モニタリングを使うときは、スピーカーから出た音を、マイクが拾い直して、こだま(ハウリング)になることがあります。ヘッドホンを使うと、避けやすくなります。

音と映像のずれは、同期オフセットで直せます。たとえば、ウェブカメラの映像が、マイクの音より遅れる場合、マイクの音に遅れを加えて、映像に合わせます。ずれの量は、手拍子を打つ映像を録画して、画面と音のタイミングを見ながら、少しずつ決めます。

確認の方法とよくある失敗

調整が終わったら、必ず、録画して聞き直します。配信中のモニタリングだけでは、他人にどう聞こえるかは、確かめにくいためです。10秒ほど、普通の声、大きな声、静かな間を録り、ヘッドホンとスピーカーの両方で聞きます。

起きること考えられる原因対処
声が割れる、歪む入力が大きすぎて、0 dBを超えているパソコンの入力音量やゲインを下げる。リミッターを入れる
語尾が切れるノイズゲートが、早く閉じすぎている閉じるしきい値を下げる。ホールドを長くする
声がこもる、不自然ノイズ抑制が強すぎる、またはコンプレッサーが効きすぎている方式を変えるか、比率を下げる
ゲーム音に声が埋もれるデスクトップ音声が大きすぎるデスクトップ音声のスライダーを下げ、声との差を作る
自分の声がこだまするモニタリング音を、マイクが拾っているヘッドホンを使う。モニタリングの設定を見直す
視聴者に、音が片方からしか聞こえないモノラルのマイクが、片側にだけ入っている詳細プロパティで、モノラル化を有効にする

音量は、視聴者側の設定にも左右されます。配信先によっては、音量をそろえる処理が自動で入る場合があります。その処理の有無や強さは、サービスごとに違い、ここでは扱いません。数字に頼りすぎず、実際に別の機器で聞いて確かめることを、おすすめします。

最初にやることの順番は、次のとおりです。

  1. OS側の入力音量を、適切な位置にする(大きすぎず、小さすぎず)
  2. OBSのミキサーで、声とデスクトップ音声のバランスを、スライダーでおおまかに決める
  3. 雑音が気になるなら、ノイズ抑制を入れる
  4. 話していない間の音が気になるなら、ノイズゲートを加える
  5. 音量の差が気になるなら、コンプレッサーを加える
  6. 最後に、リミッターを入れて、録画で確認する

フィルタは、足せば足すほど良くなるものではありません。必要なものだけを、弱めにかけるのが基本です。まずは、フィルタなしで録音して聞き、気になる点を1つずつ、対応するフィルタで直していくと、不要な処理を増やさずに済みます。

音のバランスは、画面作りとも関係します。シーンごとに、音声の設定を変えたい場合は、obs-scene-designの記事も合わせて読んでください。ホットキーでマイクのミュートを操作する考え方は、obs-hotkeysの記事に書いています。

サンプルレートとチャンネルの設定も、触れておきます。「設定」の「音声」には、サンプルレート(44.1 kHzまたは48 kHz)と、チャンネル(ステレオなど)の項目があります。動画の世界では48 kHzがよく使われますが、どちらを選んでも、聞こえ方に大きな差は出にくいとされます。大切なのは、途中で変えないことです。録画の素材を、別の編集ソフトに入れる場合は、そちらの設定ともそろえておくと、トラブルが減ります。OBSの設定を変えたあとは、一度OBSを開き直したほうがよい場合もあります。

マイクの距離も、音質に大きく効きます。口とマイクの距離が変わると、同じ声でも、音量や響きが変わります。配信中に頭を動かすと、音量が上下しやすくなり、コンプレッサーの効きも変わります。調整の前に、マイクの位置を決めて固定しておくと、設定の手戻りが減ります。ポップガード(息の音を抑える部品)や、マイクアームを使うと、位置が安定します。こうした物理的な対策は、フィルタより先に効く、基本の手当てです。

複数の音声ソースがあるときは、使わないソースをミュートにする運用も有効です。たとえば、使っていない音声入力が、環境の雑音を拾い続けていないか、ミキサーの一覧を見て確かめます。不要なソースは、「ミュート」ではなく、シーンから外すか、非表示にしておくと、事故が減ります。ミュートを切り替える操作は、ホットキーに割り当てると便利です。

ゲーム音と声のバランスは、聞く側の環境でも変わります。スマートフォンのスピーカーで聞く人は、低い音が聞こえにくく、ヘッドホンで聞く人は、細かな雑音まで聞こえます。両方で確かめられるなら、確かめてください。難しければ、声が埋もれないことを最優先にして、ゲーム音は、声より控えめに設定します。BGMを流す場合も、同じ考え方です。BGMは、声の下に敷く程度の音量が、聞きやすいとされます。

この記事のOBSの説明は、OBSの一般的な仕様と、このサイトのツールのプログラムの内容にもとづいています。すべての環境で、実機を使って確かめたものではありません。表示や動きが違うときは、お問い合わせからお知らせください。

あわせて読みたい記事